「極楽征夷大将軍」の目次
I. こんな人におすすめ
歴史を構えずに楽しみたい貴方へ
自己肯定感最弱男が、国を取る物語に興味がある方へ。
II. 作者
1966年長崎県生まれ。筑波大学卒業。2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。04年『ワイルド・ソウル』で、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞の史上初となる3冠受賞。その後も05年『君たちに明日はない』で山本周五郎賞、16年『室町無頼』で「本屋が選ぶ時代小説大賞」を受賞。その他の著書に『ヒート アイランド』『ギャングスター・レッスン』『サウダージ』『クレイジーヘヴン』『ゆりかごで眠れ』『真夏の島に咲く花は』『光秀の定理』などがある。
「2020年 『信長の原理 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」
III. あらすじ
発売日 : 2023-05-11
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史上最も無能な征夷大将軍
やる気なし
使命感なし
執着なし
なぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?
動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。
足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。
一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。
後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。
怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。
混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、
何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?
幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。
IV. 読破後の気持ち
鎌倉幕府から、室町幕府立ち上げまで関わる足利家の兄弟のお話。
錚々たるメンツが出てくるこの時代に、
登場した人物の性格や背景をわかりやすく記述されており読みやすい一作である。
メインは足利家の兄弟の物語で、〈幼少期〉〈討幕〉〈樹立〉〈内輪揉め〉〈終戦〉の枠組みで展開されており、その時々での兄弟の考えか他の違いや対比が色濃く描写されており、
時々で尊氏(兄)の方に、令和の人間化のような親近感を感じてしまう。
兄(尊氏)の発言行動に現代人なら誰でも共感するであろう。
「我らが思案してもどうこうなるものでもない。なるようにしかならん」
「何事も見ている間は楽しいが、終わってしまえがそれだけのことだ。すぐに脳裏からは消え去る。全ての世は過ぎてみれば夢のようなものだ」
「わしは一度だって、棟梁になどなりたいと言っていない」
確固たる生き方を持たず、
現代への苛立ちも使命感もない人間が、
室町幕府のトップ、時代を席巻している。
その史実に興味しか湧かないのではないだろうか?
つまり現代に興せば、無気力無欲自己肯定感激低人間が、総理大臣になるようなものだ。
この人間が周りの血気盛んな人間に囲まれ押し上げられていく様がどんどんページを進めていく。
ようこそ現代風室町時代へ。