「ひらいて」の目次
I. こんな人におすすめ
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II. 作者
III. あらすじ
"たとえ"という名の男子に恋をした女子高生・愛。彼の恋人が同級生の美雪だということを知り、次第に接近する。火のように激しい気性をもった愛は、二人の穏やかな交際がどうしても理解できず、苛立ち、ついにはなぜか美雪の唇を奪う。身勝手にあたりをなぎ倒し、傷つけ、そして傷ついて。芥川賞受賞作「蹴りたい背中」以来、著者が久しぶりに高校生の青春と恋愛を詩的に描いた傑作小説。
IV. 読破後の気持ち
この小説は愛とたとえ、美雪の三角関係の物語では無く、たとえという「例」のような存在を間に置いた、愛と美雪の二人の話だ。陽と隠、火と雪、凡そ対の様な二人がたとえを愛したり、お互いを愛したり、という高校生の留まれなさや苛立ち、激情が描かれる。読者はラブストーリーにありがちな、どちらかに肩入れ出来ず二人の間を行ったり来たりすることになる。
「確かに初めは自分でも抑え切れない激情があった。しかしいま、彼らを求めてはいるが、なにか違う感情へ変化している。友情とも、愛情とも違うなにか。受け入れてもらった。その事実が心を満たす。愛とは違うやり方で、でも確実に隙間を埋めていく。」
最後にひらかれたのは、美雪の手紙としわくちゃの千代紙で出来た鶴だった。