「星の子」の目次
I. こんな人におすすめ
家族関係に悩む人。
II. 作者
今村夏子
III. あらすじ
林ちひろは、中学3年生。出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、その信仰は少しずつ家族のかたちを歪めていく、、。野間文芸新人賞を受賞し、本屋大賞にもノミネートされた著者の代表作。
IV. 読破後の気持ち
家族の物語は難しい。貧乏だから、片親だから、血が繋がっていないから、「悪い家族」。裕福だから、二親だから、血が繋がっているから、「良い家族」。逆に、貧乏だけど、片親だけど、血が繋がっていないけど、「良い家族」。裕福だけど、二親だけど、血が繋がっているけど、「悪い家族」。というように極端ではあるが、家族という集団はどうしても記号的に良い、悪いで描かれやすいように感じる。今村夏子が描く家族はそのどちらにも当てはまらず、人間の複雑さや矛盾を残酷且つ美しく描き出す。
あやしい宗教にハマった両親と、反抗して失踪した姉、その間にある主人公・ちひろから構成される林家は、この情報だけを見れば「悪い家族」だ。しかし、物語を通して描かれるちひろの生きる姿を見ても「悪い家族」だと言えるだろうか。信仰している訳でも無いのに「金星のめぐみ」を飲み続け、大きな紫色の眼鏡をかけ、狂ってしまった両親を受け入れるちひろは、生活を続ける。親戚が宗教の無力さを訴えても、ちひろはそんなこと知っていてどうでも良いのだ。好きな先生に親を不審者と間違われて、恥ずかしくても自分の親はそういう親であるというだけなのだ。
わたしはしゃくり上げながら、「南先生に送ってもらったときに公園で見た怪しい人、あれうちの親なんだ」といった。
「知ってるよ」となべちゃんはいった。「だって有名じゃん」
「・・・おれは知らなかった」と新村くんがいった。「おれは本当に知らなかった。そうか、あれ林の父ちゃんだったのか」
ちひろが両親を受け入れたように、友達のなべちゃんとその彼氏の新村くんはそんな両親を持ったちひろをただ受け入れる。ちひろにとって自分を受け入れられることは、狂った家族を受け入れた自分を受け入れられることなのだ。
ラストの家族三人で星を見るシーンは、他者から見れば救いも希望も無いかもしれない。第三者が見ればある種恐ろしく、今後のちひろを憂うかもしれない。それでもちひろにとっては愛する家族と見た星空なのだ。