今、あなたに伝えたい作品

本と映画と感想と。おなたの気持ちに寄り添う作品に出会えるブログ

本と映画の魅力を貴方に

このブログは、本や映画に興味がある人、これから興味を持つ予定の人におすすめです。

全ての記事に「〜貴方へ」の誘導を施しています。

貴方の心に残ることを願っています。

心に残る映画50選【mid90s】〜90年代のストリートカルチャーに憧れる貴方へ〜

youtu.be

「mid90sの目次

I. こんな人におすすめ

90年代のストリートカルチャーに憧れがある人。

II. 監督

Jonah Hill

 

主演:Sunny Suljic

III. あらすじ

filmarks.com

1990年代半ばのロサンゼルス。13歳のスティーヴィーは兄のイアン、⺟のダブニーと暮らしている。⼩柄なスティーヴィーは⼒の強い兄に全く⻭が⽴たず、早く⼤きくなって彼を⾒返してやりたいと願っていた。そんなある⽇、街のスケートボード・ショップを訪れたスティーヴィーは、店に出⼊りする少年たちと知り合う。彼らは驚くほど⾃由でかっこよく、スティーヴィーは憧れのような気持ちで、そのグループに近付こうとするが…。

IV. 鑑賞後の気持ち

この作品は90年代のロサンゼルスを舞台において、13歳の少年、スティービー(サニー・スリッチ)の日々を描いた作品である。十代ながら酒や煙草を当たり前に嗜みスケートボードにのめり込む少年達や、そんな彼らをフィルムの質感を持ってエモーショナルに映した今作は、誰が見てもカッコよく美しい反面、「エモい」、「オシャレ」という言葉で片付けられがちだ。もちろん、その「エモさ」は今作の最大の特徴でもあるが、それだけでは足りないこの作品の豊かさを書き残しておきたいと思う。

 

今作は主人公・スティービーが兄・イアン(ルーカス・ヘッジズ)に、物凄い勢いで壁に吹っ飛ばされるシーンから始まる。この音と絵だけで兄弟の関係性を表現するのに十分だろう。ファッションや音楽を始めとしたストリートカルチャーに精通した兄に、認められたい、また見返したいという思いをスティービーが思っていることもよくわかる。そんな生活の中でスケートボードに興じる年上の少年達の中へ、スティービーはサンバーンというあだ名と共に居場所を作り出していく。

 

この作品のとても優れている点は、物語の中にある人間関係に当事者性を映し出している点である。90年代のロサンゼルスのストリートカルチャーにある不良性やその中で生きる彼らの破天荒な生活に、直接的な共通点を感じた人は少ないだろう。しかし、サンバーンが関わる年上の少年達を見た時の感情は、どこか知っていると感じた人が多いと思うのだ。外から見ていた時は全員が憧れの対象だったのに中に入ってみると、年下だからこき使われている奴、いじられキャラな奴、たまに他の人が引く程やりすぎちゃう奴、どこか落ち着いて周りが見えている本当にカッコイイ奴、、とそれぞれに役割やキャラクターがあること。初めて役割を与えられた時の嬉しさ。憧れの人に笑ってもらえた時の喜び。圧倒的に勝てなかった兄の負けた顔を知った時の感情。これはサンバーンが感じる感情だけではない。ルベン(ジオ・ガリシア)の自分より下の奴が入ってきた時の安堵と、こいつには負けられないという恐怖感。フォースグレイト(ライダー・マクラフリン)のイジられているのか、いじめられているのか自分でも判断が付かない感覚。レイ(ナケル・スミス)の向上心と、ファックシット(オーラン・プレナット)のこのまま楽く生きていたい気持ち。挙げればキリが無い程、彼らの生活とかけ離れた日常を送っていても知っている感情を見つけ出すことが出来る。

 

知らないからこその憧れと、知っているという共感の絶妙なバランスの上で作られた、本当の意味でエモーショナルな作品だと言えるだろう。